良い映画を観た

 最近社会に価値付けられたものの面白さがわかってきて、どんな作品も楽しめるようになってきました。ありきたりな三角関係には人付き合いの難しさを重ね、ごく普通のサラリーマンにも生活を築く一人の人間を見出して、それをもって自分自身に問うようにして味わえるようになりました(我ながら今まで視野狭過ぎワロタです)。

 

 だから僕は一番好きな映画作品に今夏観たばかりのマッドマックスを挙げたいのですが、数日前観たキングスマンもそれに肩を並べ得るくらいの感銘を受けた映画でした。

 マッドマックスが全てを失った者の、誰にでも共有され得る物語であるとするならば、キングスマンは一つの完成された目指すべき男の調和を描いた話です。自分に問うて愉しむにはうってつけですね。

 

 この作品は、才のある青年が紳士の手引きを得て一人前のスパイ紳士になるまでの成長物語であり、あらゆる場面で紳士に求められる品格、品格に埋もれがちな人間の素直な本性が試されるような印象を受けました。見終わった僕もなんだか気品と力に満ちてきた気がします。メガネもちょっと似てるし。

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 ここからちょっと語り調になってしまうのですが、この映画には特別自分自身の生き方に取り入れたいと思えた要素と、ユニークだと感じたので特筆しておきたい点があります。

 まずは後者から。秘密組織キングスマンの頭領であるアーサー(俳優はガチ貴族)が、品格を身につけた紳士でありながら徹底して憎たらしいキャラとして描かれるところですね。主人公の求める品位の象徴であるこのよぼよぼのおじいちゃんは、主人公に銃を向けたり飼い犬を撃たせたり毒を飲ませたり、師のハリーに嫌味をたれたり厭世的な悪役に同調したりととにかくクソです。

 紳士度の序列を作るなら「アーサー>ハリー>エグジー>義父≧バレンティン」って感じで、悪役とセットになって主人公と師を揺さぶるポジションにあるのですが、彼ら両端をきっちり殺して上手く中庸でやってく主人公をみせるってのは僕の観てきた作品ではなかなかない洗練された展開ですね。こういうの望んでました。悪役バレンティンも品がカケラも無い天才として最高に魅力的でしたね...あのハリーを手玉にとって殺すって凄くないですか!?

 

 僕がこの映画で得られた最大のギフトは、暗に描かれる正義やその象徴である王への忠誠と、それに対応する名誉の関係ですね。日本であるところの山口組の靖国神社参拝にみられるものなのではないでしょうか。

 紳士の威厳はどこからくるのでしょう。それはおそらく、一人の素晴らしい紳士や形而上の神ではなく、身体的存在でありながら宗教的指導者でもあるイギリス国王によって与えられるものだと思われます。宗教的指導者の繋がりが血筋や才能によってではなく、人間本性と両立するマナーによって得られることを描いたこの作品は、私達に品格の道をより大きく開かせるのではないでしょうか。